第 4 体 ねぶたの残り火 (ねぶたののこりび)

青森県 / 図鑑番号 004 / 公開 2026-05-09

出身地

青森県全域。 特に青森市の中心街、 弘前市の城下町、 八戸市の港の通り。

姿

身長は人間の腰くらい。 透き通った提灯のような体に、 中で赤と黄色の火が静かに揺れている。 顔は描かれていないが、 ねぶたの絵師の筆遣いを真似て、 見る人によって違う表情に見える。 背中にはねぶたを引いた縄の擦り跡が、 うっすら模様のように残っている。

特技

出る時と場所

時刻は祭りが終わった翌朝の 4 時 19 分から 5 時 50 分の間、 そして冬の夕方の 16 時 38 分から 17 時 22 分の間。 場所はねぶたの倉庫の前、 祭りの後片付けが終わった通りの電線、 雪の積もった神社の鳥居の影、 そして 「あの夏は楽しかったな」 と窓の外を見た人の家の天井。

仲良くなる方法

ねぶたの音 (ラッセラー、 ラッセラー、 ラッセラッセラッセラー) を、 1 人で歩いている時に小さく口ずさむ。 誰にも聞かれないくらいの声で、 1 拍だけでよい。 ねぶたの残り火は、 その音を聞き取って、 あなたの肩のすぐ後ろに浮かんでくる。 振り返らずに歩き続けると、 残り火は 3 歩ぶんついてきて、 あなたの帰り道が少しだけ短く感じられる。

ひとこと物語

ねぶたの残り火は、 大型のねぶたの中で燃えていた火が、 祭りの後で全部消されたあと、 それでもひと粒だけ消えずに残った火から生まれた。 祭りの 5 日間に集まった人々の歓声と笑顔と、 引いた人たちの汗と肩の痛みを、 ぜんぶ覚えている。

冬になると、 残り火は雪の積もった青森の空をゆっくり浮遊する。 家の窓の外から、 子供がこたつで宿題をしている姿を覗き見て、 「ああ、 あの子は今年の祭りで一番大きなはねとを跳ねていたな」 と思い出す。 そして翌年の 8 月の祭りの初日、 残り火はまた新しいねぶたの中に戻り、 真っ赤に燃え始める。

会えるのは、 祭りの翌朝の早起きをした人と、 冬の夕方に 「来年も祭りを見に行きたい」 と思いをはせた人だけ。