第 2 体 雪解けまち (ゆきどけまち)

北海道 / 図鑑番号 002 / 公開 2026-05-09

出身地

北海道全域。 特に道央 (札幌、 岩見沢、 美唄) の住宅街の路地と、 道東の小さな駅の前。

姿

子供くらいの背丈の、 白い羽織を着た丸い体つきの妖怪。 頭の上に小さな雪のかたまりが乗っていて、 それが季節に応じてだんだん解けていく。 3 月になると雪が小さなクリスタルになり、 5 月になると花の蕾になり、 6 月にはチューリップになって落ちる。 落ちたチューリップは住宅街の塀の根元に咲く。

特技

出る時と場所

時刻は雪の朝の 5 時 32 分から 6 時 48 分の間。 場所は除雪の音がまだ始まっていない住宅街の十字路、 ファミリーマートの駐車場の隅の雪山が崩れる瞬間、 そして 「雪、 もう降らないでほしい」 と窓の外を見た人の家の玄関口。

仲良くなる方法

雪解けの日に、 玄関先の雪山を蹴飛ばさず、 長靴で 1 つだけ足跡をつける。 その足跡に 「ありがとう、 もう寒くないからね」 と心の中で 1 行話しかける。 雪解けまちは頭のクリスタルを 1 粒落として、 あなたのポケットに入れてくれる。 ポケットのクリスタルは溶けない。 気がつくと、 いつの間にか家の鉢植えになっている。

ひとこと物語

雪解けまちは、 長い冬を耐えた人たちの 「もう少しの辛抱」 が空に集まってできた。 だから 12 月から 2 月までは、 彼らは天井の梁の上で眠っていて、 姿を見せない。 3 月の最初の風が吹く朝に目を覚まし、 路地から路地へとゆっくり歩き始める。 ジャンパーを脱いだ子供が 「あ、 軽い」 と気づく時、 車のフロントガラスから雪が完全に落ちる時、 それは雪解けまちが手を貸している瞬間。

雪解けまちが完全に消える日は、 その年の最初の桜の咲く日。 頭のチューリップを塀の根元に植え、 「来年もまた」 と振り返って、 塀の影に消える。