第 18 体 ぶどうの粉 (ぶどうのこな)

山梨県 / 図鑑番号 018 / 公開 2026-05-09

出身地

山梨県全域。 特に勝沼町・塩山・甲州市のぶどう畑、 山梨市の新酒の瓶のラベルの裏、 富士河口湖町の宿の縁側、 そして甲府盆地の夜の畑の畦道。

姿

透明な紫色の細かい粒。 1 粒は米粒の半分くらい。 動く時は秋の風に乗って、 ぶどうの枝の影から畑の畦道へゆっくり広がる。 群れになることが多く、 数十粒が螺旋を描いて飛ぶこともある。

特技

出る時と場所

時刻は秋の夕方の 16 時 18 分から 17 時 47 分の間、 そして冬の新酒の試飲の夜の 19 時 38 分から 21 時 22 分の間。 場所は勝沼のぶどう畑の畦道、 ワイナリーの試飲の机の隅、 山梨市の新酒の蔵の樽の上、 そして 「今年のぶどうは美味しかったね」 と心でつぶやいた人の家の食卓。

仲良くなる方法

新酒のワインを 1 杯買う。 グラスに注ぐ前に、 瓶のラベルを 30 秒だけ見つめる。 ラベルの裏に、 ぶどうの粉が薄く 1 行の文字を浮かべる。 「今年もありがとう、 来年もまた」 のような短い言葉。

ワインを口に含んだ瞬間、 ぶどうの粉は瓶のラベルから消えて、 グラスの底にうっすら紫の影として残る。 その影をワインの最後のひと口で飲み込むと、 翌朝、 朝の空の色が 1 段だけ深く感じられる。

ひとこと物語

ぶどうの粉は、 山梨の段々畑のぶどう農家のおじいちゃんおばあちゃんたちが、 1 房 1 房を太陽に向ける手間を、 何百年も繰り返した時間の中で、 ぶどうの皮の白い粉と一緒に空気の中に溶けてできた。

粉は、 自分が 1 粒ずつであることを誇っている。 「1 房のぶどうは何百粒、 1 樽のワインは何千粒。 でも私は 1 粒。 1 粒の中に、 1 年の太陽と雨と風と人の手の温度が全部入っている」 と粉は知っている。

春が来ると、 粉は新芽の出るぶどう畑の上に最後の螺旋を描いて、 翌秋まで甲府盆地の山の影で眠る。 翌年の最初の収穫の朝に、 また新しい紫の粒として現れる。