第 15 体 蛍烏賊の灯 (ほたるいかのともしび)

富山県 / 図鑑番号 015 / 公開 2026-05-09

出身地

富山県全域。 特に滑川市・水橋・四方の富山湾の桟橋、 黒部の海岸線、 立山連峰を望む夜明けの浜辺。

姿

体は青白い小さな提灯の形。 大きさは大人の親指と人差し指で作る輪くらい。 中に薄い光がゆらりと揺れていて、 その光の輪郭が時折蛍烏賊の触手のように 8 本だけ伸びる。 動く時は水中ではなく空中を、 まるで波に揺られるようにふわりと進む。

特技

出る時と場所

時刻は夜明け前の 3 時 47 分から 4 時 38 分の間、 そして夕暮れの 18 時 12 分から 19 時 7 分の間。 場所は富山湾の桟橋の先端、 漁船が並ぶ港の岸壁、 立山連峰の頂上を映す窓ガラスの内側、 そして 「もう少し早く起きてよかった」 と桟橋に立った人の靴の周り。

仲良くなる方法

夜明け前の桟橋で、 海の方を 1 度だけ振り返らずに、 立山連峰のほうを向いて深呼吸を 3 回する。 3 回目の息を吐ききった瞬間、 蛍烏賊の灯はあなたの後ろから前に回り込んで、 桟橋の先端に小さな光の点として浮かぶ。

「ありがとう」 と心で 1 言つぶやくと、 灯は 8 本の触手のような光を一瞬広げて、 あなたの靴の左の踵に小さな青い印を 1 つだけ残す。 その印は家に帰っても消えない。 翌朝、 鏡を見ると、 目の下の隈が 1 段だけ薄くなっている。

ひとこと物語

蛍烏賊の灯は、 富山湾で漁を続けてきた人たちが、 夜明け前の真っ暗な海に船を出すたびに、 心の中で 1 つだけ点した小さな灯火が、 海の上の風に集まってできた。

灯は、 漁師だけのものではない。 立山連峰の朝焼けを見に来た旅人、 1 人で海辺を歩いた人、 桟橋で電話越しに親に元気を伝えた誰か、 そういう全ての人の心の灯火を、 灯は集めて持ち歩いている。

春先の蛍烏賊の身投げの夜、 灯は本物の蛍烏賊たちと一晩だけ一緒に踊る。 朝になると、 灯は桟橋の上にまた戻ってきて、 1 人で次の旅人を待つ。